【書評】
作者:横尾 忠則
出版社:ポプラ社
発売日:2016/10/8
恥ずかしながら、横尾忠則と聞いて、イラストレーターとしてのイメージしか湧かなかったが、画家、小説家などとしても各種の賞を受賞されており、大活躍されていると知った。本書は、80歳になる著者の創作や人生に関する思いを記述したものである。
この本を手に取った時は、無頓着で行こうとか、ビバ!老人文化とか目に入ったので、良くある人生のベテランによるエッセイかと思ったが、読んでいくうちに、一つ一つの中身が結構深く、濃い内容ではないかと思うようになり、あっという間に読んでしまった。しかも、不要な力を抜きながらも、何か元気になったような感覚も覚えた。著者のような才能もなければ、経済力もないので、同じことや同じ考えをそのまま実行することはできないが、色々と自分の考え方を見直すヒントがたくさんあるように思った。
本書に書かれていたこと中で、私が気に入った内容を一つ紹介する。「老齢になると自然に欲望も執着も消えて、好きなことだけが残っていく。隠居の本当の意味は好きなことで忙しくすること。」アラ還世代の私からすると、この通りに老後は楽しい毎日が待っているに違いないと思いたいが、本当に好きなことだけが残っていくのだろうかとか、それどころか好きなことを見つけなきゃとか、余計なことを考えてしまう。やはり凡人ということか。
本書を読んだ後、気になってウィキペディアで著者のことを調べてみた。幼少期から80代になるまでさすがに凡人とは異なる生き方をされてきたようである。それでこういう文章が書けるのかと納得した。著者の美術作品も見に行ってみようと思う。