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「魂の退社」/稲垣 えみ子

【書評】

「魂の退社」

 作者:稲垣 えみ子
 出版社:東洋経済新報社
 発売日:2016/6/9



 著者はいまや有名人となったあの「アフロ記者」である。朝日新聞社を退社後にテレビ、ラジオへの出演も少なくないようで、また著書も何冊かあり益々活躍されているようだ。

 それにしても…である。コラムニストとして活躍し、人気も博していた最中50歳で退職し、その後は無職という潔さである。思い切りがいいというか度胸があるというか、本書を読んでいるこちらまでがなんだか気分スッキリ爽快になっていたりするからアラ不思議。少し大袈裟かもしれないが、生きる意味や価値、はたまたお金との付き合い方を見直すきっかけにもなる。会社で働くということの価値観をドッカンとひっくり返されるというか、ユッサユッサと揺さぶられるというか、なかなか刺激的な内容だ。

 その昔(バブル全盛の頃だろうか)「社畜」という言葉がよく聞かれた時期があった。そのような会社に依存する生き方からスッパリ足を洗い、人生をやり直すための指南書という言い方もできるかもしれない。長年大企業で大過なく過ごしてきたが、何か違うものを求めてこれから退職しようとしている人、あるいは不本意ながら退職を余儀なくされようとしている人にも参考書としておススメしたい。一方で、そもそも大企業とは無縁な自立した社会人生活者にとっては、「ん?何をいまさら…」と思ってしまいそうな内容であることも付け加えておく。

 本書のメインテーマは会社との関係性ということになるわけだが、もうひとつ大事なサブテーマと呼ぶには惜しいくらいなのが節電を中心とした節約ライフ、余計なものをそぎ落とした暮らし方というものである。わたし自身にとっても大変関心がある分野で、ミニマリストに憧れて、物のない暮らし、電気を使わない生活を(ある程度)実践しているが、著者のその徹底ぶりには感心するのを通り越して少し呆れてしまうくらいだ。しかし著者はそれを辛いけどガマンして取り組んでいるというのではなく、ゲーム感覚で楽しんでいる気配すらあるという軽やかなスタンスなのだ。見習うべきことが多い。

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