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「起業の砦」/江波戸 哲男

【書評】

「起業の砦」

   作者:江波戸 哲男
 出版社:講談社
 発売日:2011/01/28



 まず、最初の感想として、普段、ノンフィクション中心であまり小説を読まない私でも、次の展開を期待しながら次へ次へと読み進めることができる本であった。そもそもゴールデンウィークで時間があったので、いつもはあまり読まないジャンルの本を読んでみようと思い、ただそうは言っても多少自分がイメージしやすい分野が良いかと思い、ビジネス小説を探していて巡り合った本である。

 本書は、上司の作戦にまんまとはまり、部下のリストラを実行し、自らもその責任を取る形で退職した父親と、パソコンが友達というタイプで就職しても長く続かず、友人とインターネット業界で起業し、成功を夢見ながらもなかなか芽の出ない息子の話である。両者に共通するのは、それぞれ事情は異なるが会社を興し、それぞれの業界に独特な嫌がらせや困難をなんとか回避しながら前に進んでいくという姿である。また、それと同時進行で、父親と息子のつかず離れずという関係性が微妙に変化していくところが興味深かった。

父親と息子の話に加え、母親とのからみや息子の気になる女性との交流などが、テレビドラマのように場面を切り替えながら描かれていくのだが、その展開のテンポが良いからか、話が自分の頭の中でスムーズにつながっていった。

 私自身、この父親と近い世代で、リストラの話や息子との関係性が良く分かるうえに、インターネット業界の仕事の経験もあるが、特に違和感もなく、またほどよいハラハラ感を持ちながら楽しく読むことが出来た。あえて一つ言わせてもらうと、後半のサクセスストーリーの展開は、読み終えた後のさわやか感はあるが、「おっ、そうきたか!」という意外性を期待していた自分もあったので、そこは著者の他の作品に期待したいと思う。

 

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