【書評】
作者:齋藤 孝
出版社:祥伝社
発売日: 2010/06/10
最近、就職を控えた大学生の息子から質問を受けることがある。息子も社会人になるにあたり、思うところがあるのであろう。質問に対して、自分が経験してきたことについては、ある程度自信を持って答えられるが、それでも、それが本当に正しいのか、自分の思い込みではないのかと言われると、なかなか自信を持って言えることは少ないのではないだろうか。ましてや、自分の経験がないことについては、過去の経験や知識を総動員して可能な範囲で答えるのが精一杯である。いや、ごまかしているというのが正しいのかもしれない。そういう時こそ、読書の力、特に本書のような書籍の力を借りる時であろう。
著者も書いているが、本書で取り上げている佐藤一斎という幕末の儒学者は知名度が低く、私自身全く知らなかった。しかし、著者によると、幕末から明治にかけての重要人物の多くが門下として佐藤一斎から学び、西郷隆盛にいたっては、佐藤一斎が記した「言志四録」を生涯座右の書としていたそうである。
本書は、その「言志四録」の中から著者が選んだ言葉を著者ならではの視点で解説しているものであるが、冒頭に書いた私のような者には、なるほどと納得できる内容が多く、息子への答えの裏付けとしてはもってこいの内容であった。
参考にアラ還世代にもかみしめて欲しい言葉を一つ紹介する。「少にして学べば、即ち壮にして為すこと有り。壮にして学べば、即ち老いて衰えず。老いて学べば、即ち死して朽ちず。」解説は、本書でご確認いただきたい。人生の基本は、いつの時代も変わらないのだと実感した。