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「定年後 豊かに生きるための知恵」/加藤 仁

【書評】

「定年後 豊かに生きるための知恵」

 作者:加藤 仁
 出版社:岩波書店
 発売日: 2007/02/20


 私自身は、既にサラリーマンを辞めてしまったので定年ということを気にする必要も無いし、出来る事であれば、なるべく長く仕事をしていたいと思っている。とは言え、いつまで仕事をもらえるかも分からないし、気力、体力の問題もあるであろう。やはり、そうなる前に自分のやりたいこと、熱中できることを見つけておきたいという気持ちはずっと持っている。

 本書は、二十五年以上にわたって定年退職者の取材を続け、三千人以上の人にインタビューを試みた著者が、様々な定年後の生き方を、仕事、楽しみ、家族、地域など、いくつかの観点でまとめた上で具体例を中心に説明したものであり、私のような悩めるアラ還世代に多くのヒントを与えてくれる書籍である。

 本書の中に書かれているが、二十歳から働きはじめて六十歳で定年を迎えたとすると、それまでの労働時間の総計は二千時間(年間労働時間)x四十年間=八万時間になる。では、定年後はというと、睡眠や食事、入浴の時間を差し引くと一日の余暇時間は平均して十一時間以上もあり、八十歳まで生きるとすると、十一時間x三百六十五日x二十年間=八万三百時間となる。つまり、定年後の余暇時間は、会社で働いた時間とほぼ同じということである。まだまだ十分に時間があるとうれしく思うか、まだそんなにあるのかと不安になるかは、自分の気持ちと準備次第ということであろうか。

 本書では、著者の取材に基づく幅広い事例が、成功例だけでなく失敗例も含めて幅広く記載されているが、逆に、この事例はもっと詳しく知りたいという人には、少し物足りないかもしれない。あくまでも、ヒントを見つけるための本ととらえた方が良さそうである。従って、ヒントを探している人が、そういう意識で読むと大いに参考になるが、そうでない場合は、事例の羅列に終わってしまうことになるかもしれない。読む本人の意識次第であろう。少なくとも私には、色々と検討してみたいヒントを与えてくれた。

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