【書評】
作者:藤原 和博
出版社:ポプラ社
発売日:2011/11/22
タイトルを見て、自然に本書を手に取っていた。言わずと知れた司馬遼太郎の長編歴史小説の“雲”が“坂”に換わっている。著者は、その当時、ニュースでも頻繁に取り上げられていたので、私も記憶にあるが、東京都における義務教育初の民間人校長になった方である。
「坂の上の雲」で描かれた時代にくらべ、現代は平均寿命もぐっと延び、60歳から65歳で仕事をリタイヤした後も相当の時間が残されるという時代になった。そんな状況の中で、惰性では乗り切るのが難しいと思われる、その残された時間を本書では「坂の上の坂」と呼び、いかにその坂にいち早く気づき、上り調子にその坂を上るかについて色々な面から助言している。
本書を読み進めていく中で非常に納得できたのは、成熟社会になった現代の日本では、高度経済成長期にあったような社会的に画一化された価値観はなくなり、みんな一緒に幸せになれる約束された一般解もしくはモデルがないという点である。この正解のない成熟社会で、どういう思考で「坂の上の坂」を上るエネルギーを得ればよいのか。会社あるいは仕事との付き合い方、コミュニティ、パートナーとの付き合い方、さらにはお金の準備など、幅広く著者の考えや準備の仕方を助言している。
○○歳までにやっておきたいこと、というタイトルの本はたくさんあるが、本書は私にはとても納得感のある内容であった。できれば本書のサブタイトルにあるように、アラ還世代になるよりも前に、是非読んでいただきたいと思うが、アラ還世代でも参考になる点がたくさんあると思う。さあ、私もこの坂に立ち向かおう。