【書評】
「ブルネイでバドミントンばかりしていたら、なぜか王様と知り合いになった。」
作者:大河内 博
出版社:集英社インターナショナル
発売日:2014/11/26
全体的にテンポよく読み進められ、読み終わった後に、爽快感が残る本であった。若い外交官のプルネイでの滞在記で、学生時代にやっていたバドミントンを通じて、庶民から王族に至るまで幅広くつきあいながら仕事に役立つコネクションを作り、大きな仕事を成し遂げていく一種のサクセスストーリーである。
前も後ろも分からない状況で現地に赴任し、何をやってもだめな状況から、ブルネイやその周辺諸国で盛んなバドミントンを現地で始めたことから、色々な障害が面白いようにクリア出来ていくという話に加え、その内容からブルネイという国の国民性やお国柄、さらには王族の暮らしぶりといったことも垣間見ることができ、とても興味深く読む事ができる。
また、著者自身の前向きな努力にも感心させられるが、それだけでなく、家族帯同での赴任による奥様や子供との関わり方に悩みながら仕事に熱中していく様や、上司によるパワハラ、さらには上司の妻から自分の妻への嫌がらせなど、非常に狭く閉じられた日本人社会の中での厳しい現実にも話がおよび、少々海外駐在経験のある私には、同感できる部分がたくさんあった。
最終章では帰任してからのことにふれている。経産省に復帰し情報通信機器課に配属されたのだが、以前は花形産業であった家電、情報通信機器、電子機器などが、なぜこんなにも弱ってしまったのかと驚いた、ということが書かれている。またその理由については、減点主義による評価方式により、判断を下したり、責任を取る人がいなくなったからではないか、とビジネス書かと思うような記載もあったが、この部分については、元サラリーマンの私も大いに納得してしまった。