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「わたしが人生について語るなら」/加島 祥造

【書評】

 「わたしが人生について語るなら」

 作者:加島 祥造
 出版社:ポプラ社
 発売日:2011/1/19



 アラ還世代になってから、自分よりも20年以上先輩の方々が書かれた、人生を総括するような書籍に興味を持つようになった。いつまでたってもなんらかの道筋というか方向性というか、そういったものを探しているのかもしれない。著者によると、本書は若者に向けて書いたものであるとのことだが、この本もそういう私のニーズに応えてくれる本であった。

 著者は自らの体験から、自分が十代の時に体験したことや感じたことが、本書を執筆した87歳の自分に影響していることを強く感じると書いている。特に、好きなことをした体験や楽しかった体験は、87歳の自分を大きく助けているとのことである。従って、十代の人には、そういった自分の好きなこと、楽しいことをたくさん蓄えてほしいと言う。

 時間の自由がきくようになる我々の世代の中には、自分の好きなことを見つけて熱中しているうらやましい人たちもいる。著者は、好きなものというのは、見つけるものではなく自分の中から湧いてくるものだと言う。そういう意味では、自分が十代のころに熱中したものを思い出して、それをきっかけに何かを始めるのが正しいやり方かもしれない。

 著者は、本書を読む若い人には、人より二、三年遅れたってたいしたことじゃないと説き、我々の世代には、老いていくことは恐怖でも何でもなく、変化を受け入れる柔らかい心を持ち続けていれば何歳になっても自分の可能性はひらけていくと説く。私自身は、本書で一番気に入ったのは、「人生でいちばん大切なのはバランスだよ」という一文であった。本書は、著者の柔らかい語り口で、何か大切なものを教えてくれる一冊になるのではないだろうか。

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