【書評】
作者:秋山佳胤、森美智代、山田鷹夫(共著)
出版社:マキノ出版
発売日: 2014/7/15
栄養バランスの良い食事を1日3回規則正しく取ることが健康の秘訣であると、あなたは信じて疑わないのではないだろうか。多少の不摂生をしても、ちょっと元気がなくても、きちんと食べられていればそんなに心配ないだろうと、そう思っているのではないだろうか。そんな人にはこの本を手に取ってみて欲しい。これを読んで「そんなバカなっ!」と驚くかもしれない。「ウソだっ!あり得ない。」と嫌悪感を丸出しにするかもしれない。確かに俄かに信じがたい、悪く言えば胡散臭い記述がないわけではない。しかし我々は「食」というものに対して、少し違う角度から考察してみる必要があるのではないか。特に今のこの時代。
食糧問題は地球規模で大変深刻な状況だ。一部の発展途上国、地域では食料が不足することによる健康被害が問題になり、餓死に至るケースすらある。その一方、先進諸国ではカロリーの過剰摂取による肥満、糖尿病などの症状が問題になっている。生産や流通を見直すことで改善できる部分は確かにあるだろう。しかし将来に向かって地球人口はまだ増加しており、さらに全体的な生活水準が向上していることで、より多くの食料が必要とされている。この傾向が続けば、近い将来不足する食料の争奪戦が繰り広げられることは避けられないのではないか。
そんな折、本書の3人の著者が扱う共通テーマは「不食」である。聞いたことがある人はそう多くはないだろう。文字通り「食べない」ということだ。そう聞いて巷にあふれるダイエット本など思い浮かべるかもしれないが、まったくのお門違いである。あるいは断食のススメと思うかもしれない。多少似ている部分もあるにはあるが、やはり根本的に違う概念であると本書で説明されている。もう食べることはやめてしまおう。あるいはそこまでいかなくても極端に食べる量を減らそう。そう主張している。
なぜ?地球規模の食料問題を解決するため?もちろんそれには大いに貢献するだろう。しかしもっと身近な個々の問題として考えてほしい。食事をしそびれて空腹なまましばらく過ごさざるを得ないことが、あなたも時にはあったと思う。そんなとき体の状態はどうだっただろうか。気分は最悪だっただろうか。少なくとも直ちに倒れたり餓死したりすることはなかっただろう。それどころか集中力が増したり、体のキレが良かったり、意外と気持ちが晴れたりと、思わぬポジティブな効果を味わったことがないだろうか。わたしには少なからずある。
「寝食を忘れる」という言い方がある。それは何かに没頭することで忘れるのか、それとも逆に忘れることで没頭できるのか。「霞を食う」という表現がある。仙人あるいは一部の超能力者にしかできないことなのか、それとも慣れでしかないのか。折しも「持たない暮らし」、「ミニマリスト」などというライフスタイルが共感を得る昨今である。次は「食べない」生活というものが注目を浴びるのではないか。そんなことを考えさせられる1冊である。