【書評】
池田 清彦
出版社:KADOKAWA
発売日:2016/6/10
本書の著者は、「ホンマでっか!?TV」というテレビ番組にコメンテーターとしてよく出演されている生物学者である。テレビでのコメントも独特な雰囲気がある著者であるが、何か面白そうな本だと思って読んでみたところ、その通りであった。
世の中の常識や正論と思われていることを、生物学者らしい発想で、気持ちよく、かつ大胆に否定しているのが面白い。非常に納得させられる内容も多く、また人生をもっと楽に考えられる術も教えてくれる。
私がふむふむと思った一つは、「酒を禁止されたら、その日から私は死んでいるのである。酒を飲まなければ10年生きられて、酒を飲み続ければ2年で死にますよと言われても、私にとって酒を飲まない10年はほとんど生きていることにはならないのだから、酒を飲んで2年生き延びたほうがいいのである。」という部分である。人間の体のこともよくご存じであろう生物学者が言っているのだから、説得力もある。全体的にこんな感じで現代の色々な問題を論じており、休日に肩の力を抜いて読むにはちょうどよいのではないだろうか。
その他にも医療、教育、環境などについて、人間の脳の仕組みに基づいた解説なども含め、楽しく読むことができた。ただ、少々突拍子もなく現政権を批判する内容がちょこちょこと差し挟まれており、それが気になる人もいるかもしれない。著者は本書をマイノリティ視点で書いているとのことであるが、ひょっとすると、この批判が本書の最大のテーマなのではないかと思ってしまった。